軽視される株主価値~時価発行増資~
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- 極東貿易は2015年9月に時価発行増資(以下「増資」といいます。)を実施し、僅か1,233百万円を調達するために、21%もの希薄化が発生しました。そして、増資の発表後に21%以上株価が下落しており、希薄化によって株主価値が毀損したことが見て取れます。
- 一方で、増資によって調達した自己資本が、自己資本全体に占める割合は6%に過ぎず、希薄化による株価への悪影響とは対照的です(割合は16/3期現在の数値を算定。)。この理由は、増資を行ったときの株価のバリュエーションが著しく低かったことで、下図のように増資によって調達した金額が、自己資本全体に比べて著しく小さくなっています。
- (出所:QUICK ASTRA MANAGER及び2015年9月18日のプレスリリースより弊社作成)
- 極東貿易は、「増資によって取得した資金を財務基盤強化のため、全額を有利子負債返済資金に充当する」と発表しています。当時、有利子負債は、連結子会社となったヱトーの株式取得のために一時的に増加していました。
- しかし、現金、有価証券売却後手取り想定金額から有利子負債を控除したネットキャッシュの推移をみると、増資がネットキャッシュに与えた影響が小さかったことが見て取れます。既に現金類似物を173億円保有していた状態で僅か12億円の調達を行うために21%もの希薄化を伴う増資を、本当に行う必要があったのか疑問が残ります。
- (出所:QUICK ASTRA MANAGER及び2015年9月18日のプレスリリースより弊社作成)